リレーコラム新企画 No.1 自分で考える/高林健示
「自分で考える」
高林健示
阪神・淡路大震災の翌年から教育研修委員になり、学会認定資格「グループサイコセラピスト」の養成のための教育研修システム作りに加わった。委員は近藤喬一さん、鈴木純一さんと私であった。システムは、経験者と初心者が相互に学習していくことを基本として、さまざまな集団精神療法に通底している「集団の力動を見る」と「対人交流を扱う」を研修の目的とした。新しいシステムが始まった1998年から2002年まで教育研修委員会は、近藤喬一さんが委員長で、私は事務局を担当していた。
当初は「体験グループ」の研修を行っていたが、学会員から「考え方を知りたい」という声が出てきたため、私は自分の体験をまとめた「入門コース」を学会で始めた。「なぜグループなのか」「グループの枠組み」「グループで起きること」「継続することの意味」「レビューの進め方」「発言へのかかわり方」「コンダクターの役割」などについて、パワーポイントを利用してビジュアルに表現した。参加者との相互学習になるように質問や感想を取り入れ少しずつ内容を変えていった。私自身のグループ理解も改良?されていった。「毎回、変わっているのが面白い」という感想をいただいたが、複数回参加している人もいたのであった。ある学会で「入門コース」を終え会場を出ると一人の参加者が近づいてきた。感想を伝えに来たのであった。「結局、高林さんは自分で考えろと言っているのですね」と言われたのである。私が「入門コース」で学習してもらいたいことは伝わっていた。
さて、集団精神療法の学習には、書籍や文献を読み講義を受けるという「知識の習得」という方法がある。講演や発表演題を聞き、学会誌を読むことなどで知識を広げていける。私がお勧めするのは、学術大会で演題発表し、感想を聞き、質問に答えていくこと。これは、臨床の自律性を確保するためには欠かせない。次に、「スーパービジョン」という方法がある。個人スーパービジョンによって自分のかかわり方を検討していく。教育研修委員会では研修会や学術大会で、公開のグループスーパービジョンとして「事例検討」を提供している。三つめは「体験グループ」に参加すること。メンバーになって自分の気持ちを考えていくことは集団精神療法家にとって貴重な体験となる。気をつけたいのは、「体験グループ」はコンダクターの介入方法を勉強する場ではなく、自分が「メンバー体験」をする場であることである。
日本集団精神療法学会公式HPコラム No.1 2022年2月)
※PDFファイルで読む →自分で考える/高林健示さん(コラム1)