リレーコラム32 片岡圭美 2020年06月

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「カギを開けておく」

   片岡 圭美

以前グループの研修のとき、「OTさんて変わった人が多いですよね」と言われたことがある。周囲からそう思われることは分かっていたことだが、面と向かってよく知らない人に言われたのは少しショックだった。精神科の職種の中でも、「レクをする人」「良くわからない」と言われることは多く、昔は「遊んでお金もらえるなんて、いいわよね」と言われたこともある。精神科病院で作業療法の効果を感じている人はどのくらいいるだろう。診療報酬の手段とされ、「ないよりはマシ」と思われることに慣れたくないと思っていた時期もあったが、最近はこだわらなくなり、患者さんに必要とされる何かが作業療法であればいいと思うようになった。

新しい職場に来て2年と少し。新病棟になり、現在の場所は患者さんの生活の場である病棟にとても近く、日々患者さんの生活が身近に感じられ、扉の向こうには日常が広がっている。現在の病院に勤務して間もないころ、プログラムのない時間に患者さんが突然扉をあけて入ってきた。それを見たアシスタントが「いま、ダメ、プログラムじゃないでしょ」と入室してきた患者さんをあわてて部屋の外に出し、内側からカギをかけた。私は違和感から、患者さんを外に出した理由をきくと「以前のOTさんがそうしていたし、個人情報があるから」との答えだった。考えてみると病院の作業療法室という場所は、病棟から距離のあるところが多く、患者さんはカギの開閉なしに、作業療法室に行くことができない事が多いように思われた。

そんな経験もあって、私が在室している間はカギを閉めず、患者さんの出入りは自由にすることにした。そして、新しい病棟の作業療法室はできるだけ大きく窓をとり、廊下から作業療法室で起こっていることをいつでも見ることができるようにした。病棟のスタッフや患者さんに作業療法室内で起こっていることを遠慮なく見て、知ってほしいと思ったからだった。患者さんは窓から手を振ったり、廊下を歩く途中にチラッと見たり、入ってきておしゃべりをしていく。最近はどちらかというと病院の様々な職員がそのドアを開けて話に来る。病院の中で起こっている様々な問題について話し、泣いたり、怒ったり悲喜こもごも。来室する職種も多種多様である。私は忙しくても必ず手を止めて話を聞くことにしている。 誰かがきちんと話を聞いてくれるという職員の経験が、いずれは患者さんの話にきちんと耳を傾けるという文化に変わっていってほしいと願っているからだと思う。

精神科病院はどこへ行くにもカギの開閉が必要で、患者さんとスタッフとの間にカギがかかっていない場所はほとんど無い。“カギを開けておく”、一見するとなんてことはないことだが、患者に寄り添う気持ちや、スタッフとのコミュニケーションなど、日常を丁寧に積み重ねること自体が作業療法なのであり、それを知ってもらうことができたら作業療法に親しみやすさを感じてもらえるように思っている。

 (集団精神療法学会公式HP リレーコラム 2020年6月)

※PDFファイルで読む → リレーコラム32 「カギを開けておく」 / 片岡圭美

 

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