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リレーコラム新企画 No.6 岡島さんへの質問とその回答

2022年7月31日

岡島さんへの質問とその回答

質問:多くの方に学会での「学び」を体験していただければと思うのですが、学会や体験グループに参加するにあたっての初期不安(メンバーとして)が強いため、参加を躊躇う人も多いように思います。また、グループを運営する人にとっても、メンバーの初期不安や、不安から生じる抵抗などに、どのように対応したらよいか困っている人がいるかもしれません。そこで、グループ初期不安を乗り越え、グループに止まり続けるために、私たち(メンバー・コンダクターの両方)にどんな工夫や心がけができるか、ご意見を聞かせていただければと思います。

グループの「初期不安」について

ご質問をいただいて、以前学会誌で初期不安を特集したことがあったと思い、引っ張り出してみました。2002年第18巻1号ですが、今読んでも色褪せない内容で、感動してしまいました。

「特集にあたって」のなかで、高良聖さんは、「セラピー的には、それ(=初期不安)はピンチであり同時にチャンスでもある」、さらに「セラピストが「依拠するアプローチによって取り扱いが異なるのは当然である」と書かれています。つまり、初期不安はメンバーに強い不快や恐怖感を与え、グループへの参加をやめることにつながるピンチでもあるが、それを通してメンバー、ひいてはグループが成長するチャンスでもある。ピンチととらえれば、なるべく不安を減らすアプローチが求められるし、チャンスと考えれば不安を吟味し、それがどこから来るのか検討することが必要となる。ピンチかチャンスか、どちらを重く見るかは、グループの目的、技法などにより異なってくる、ということだと思います。

初期不安をどう扱うかには、グループがどういうグループであるかをよく考えることが重要だと思います。精神的なつらさを抱えた人たちをサポートすることが目的であれば、初期不安はなるべく低く抑えたほうがいいでしょうし、メンバーの心理的成長を目指す治療グループなら、グループが不安を持ちこたえ、内容を吟味することを目指すことが有益かもしれません。また、コンダクターとメンバー全員がなじみのない状態で始めるグループでは初期不安があまり高まるとグループが解体してしまう危険が起こると思いますが、例えば治療者が個人治療をしている人たちからメンバーを選んでグループを始める場合で、治療者への信頼感が醸成されているのであれば、グループはある程度の初期不安に耐え、作業を進めることができるでしょう。ただ、不安を解消するか取り扱うかはどちらかの二者択一と考えるべきではなく、バランスが大事で、「このくらいは行けるかな?」というコンダクターの感覚を鍛える必要があると思います。

JAGPの研修会などで行われている体験グループについて言えば、初期不安への対応がちょっと不親切なんじゃないかな、と感じています。メンバーが円になって座り、「時間なので始めます。どなたからでもどんなことでもどうぞ」と切り出され、10分間沈黙が続く、というのは、それが起こると予想していなければかなりの不安や恐怖を呼び起こすものでしょう。初期不安の大きな部分が、グループを信頼し、そこで安心していられるかどうかに関するものだとすれば、体験グループに経験が少ないメンバーがいる場合は、少し親切にガイドをしたほうがいいと思います。私だったら、「沈黙が続いて、居心地が悪いと感じていたら、頑張って今の感じを言葉にしてみてください」と言ってみるかもしれません。経験の浅いメンバーがいない場合は、沈黙だけでなく、治療者への依存感情や反発といった防衛と思われる反応もでることがあります。その場合も、メンバーのやりとりが軌道に乗るまでは丁寧に感情レベルの介入をすることを考えたいと思います。しかし、コンダクター自身が不安になって、必要以上にメンバーの世話を焼かないように、と自らをモニタリングすることも重要だと考えています。

うーん、一生懸命考えましたが、結局どれも“バランスが大事”というどっちつかずの結論ですね。どっちつかず、ケース・バイ・ケース、出たとこ勝負といったおさまりの悪さを楽しめたら、グループって楽しいんじゃないかな、と思います。

日本集団精神療法学会公式HPコラム No.6 2022年7月)

※PDFファイルで読む → 岡島さん(コラム2)

 

広報委員より

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