リレーコラム「手間取っているけれど、退院したい人たちのグループ」神宮京子

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手間取っているけれど、退院したい人たちのグループ

神宮 京子

精神科病院が急性期・救急治療を導入していく流れの中で、三か月では退院にたどり着けない患者たちは引き続き療養していく。病状が改善しても退院に手間取る彼・彼女らは退院先の環境調整などケース・ワークが必要なことが多く、時間が経つにつれ本人の退院意欲は失われていきやすい。彼・彼女らには自分の人生において何をどうしていきたいかのビジョンが薄かったり、何かを求める過程で他者を含めた環境を活用していく力が弱かったりする印象も受ける。

そこで、入院後一年未満で、退院を目指したい(してもらいたい)患者たちを集めてグループをつくった。構造は週に一度、60分、病棟内の多目的室で実施。コンダクターは作業療法士、コ・コンダクダーは病棟ナース・精神保健福祉士・ダンス/ムーブメントセラピスト。退院への手がかりを見出しにくそうなメンバーを慢性期病棟から10名ほど選抜。入院という‘冬’の厳しさを生き抜き、退院という‘春’を迎えられるように、グループをスプリング・ボードのように使ってもらいたい思いを込めて始動した。

静かで控えめなメンバーたちのグループの中で、一年を過ぎたころから相互作用が生まれ始める。ままならない家族関係への共感、生活訓練施設やグループホームなどの社会資源に関する情報交換、選択肢とファンタジーと現実検討、一歩踏み出す前の不安の共有、実際に動き出して直面する困難さへの対処法の探索などが起きるようになった。『新しい、手のかからない患者たち』は胸の内をグループに明かし、そこから栄養補給をして、実現可能なステップを見出すようになっていく。

ひとまわりたくましく柔軟になって退院していったメンバーが‘卒後’にゲスト参加し、アドバイスをしたり、愚痴をこぼしたりすることもある。表面的には安定しているこうした新しい患者たちは、『よくわからない』と病棟スタッフは言っていた。しかし、グループは彼らの意外な一面を発見し、気持ちをくみ取り、後押しする手がかりを見出す場となっていったようである。

時が過ぎ、慢性期病棟に様々な背景を持つ人たちが入り乱れるようになったが、様変わりしながらもグループは続いている。

※PDFファイルで読む → リレーコラム「手間取っているけれど、退院したい人たちのグループ」神宮京子

 

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