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スクールカウンセラーによる保護者グループ/梶本浩史さん (リレーコラム03)

2021年11月16日

スクールカウンセラーによる保護者グループ

梶本 浩史

 スクールカウンセラー(以下、SC)として、A小学校で実践した「保護者グループ」を、(1)目的、(2)枠組み、(3)立ち上げ、(4)役割・介入技法、(5)実際の展開、(6)報告・連携方法に分けて紹介したい。

(1) グループの目的
 保護者グループを企画したのは、個別相談にのっているなかで、保護者同士が話せる場があれば、悩んでいるのは自分だけではないと実感できたり、そんなに自分を責めなくてもいいと思えて、子育ての助けになる人もいるように感じられたからであった。
個別相談でもグループでも、相談に来られる保護者にとって、子育ての助けになりたい。SC を味方だと思える「安心感」と、専門的な知識や経験への「信頼感」をもってもらえるよう、いつも意識している。

(2)グループの枠組み(時間・場所、メンバー、ルール)
 月 1 回、80 分間(11:00~12:20)、個別相談で使っている相談室でグループを行った。
メンバーは、SC に個別相談している保護者で、グループへの参加を希望された方である。
ルールは、お互いのための共通理解のような感じで、「グループで話したことを外で話されてしまうとなると、お互いにグループで話せなくなってしまいますよね。なので、それはなしということをお約束にしています」と、個別相談でグループを説明する際に伝えた。

(3)グループの立ち上げ
 グループを企画した時点で、SC による保護者グループが A 小学校に受け入れられる土壌が耕されているか見定めた。A 小学校では既に SC の活用が広がっており、主に担任の先生からの依頼で 20~30 人保護者が個別相談にいらしていたので、教育相談に関して中心的な役割を担っている先生に、保護者グループの企画を話してみた。前向きに受け入れてもらうことができ、最終的には管理職の先生の承諾を得て、グループを立ち上げた。

(4)グループでの役割・介入技法
 グループでの役割として、枠組みを守り、集団圧力が高まれば調整するようにしている。例えば、共通点ばかり言わなくてはならないような雰囲気になっていたり、いい母親でなくてはならないムードが感じられたら、水を差すようにしている。また、保護者間のつなぎになれそうであれば、短く、率直に、感じたことを話している。
 語られる言葉だけでなく、動作や表情といった非言語コミュニケーションや声のトーン、間合いなどから、それぞれの情緒、相互作用、全体の雰囲気を感じとろうとするとともに、沈黙している人や、話されない話題についても、複数の仮説を考えるよう心掛けていた。

(5)グループの実際の展開
 毎回のグループでは、始まりを告げ、簡単なオリエンテーションをした後は、司会者のような仕切る役割はなるべくとらない。少し間ができ、「リードしてくれないの?」という空気になっても、SC が少し我慢できれば、自ずとグループは動き出す。
最初は、SC に個別相談している自分の子どもに関することを、各メンバーが自己紹介のような雰囲気で話す展開になることが多かった。この時点では、どの子にもありそうな、同調しやすいことが話題に上りがちである。たとえば、「集中力が本当にない」、「何回言っても忘れ物ばかりする」、「家のルールを守れない」といったことである。
 その後、徐々に個々の反省的な思いが語られるようになった。たとえば、「怒鳴り散らして、泣かせて育ててきた」、「悩みをもっと早く打ち明けてくればよかった」、「自分が理想とするお母さん像にはなれていない」などと話すメンバーがいた。
SC の異動によりグループを終了する際には、「励まされてやっとお母さんやれていた」、「次のSCともこうやって話せたらいい」、「自分を認められるようになった」という声が聞かれた。保護者同士が話せるグループを継続してきたことで、子育ての励みとなっていたり、助けになったことが分かり、とても嬉しかったし、グループの成果と感じられた。

(6)グループの報告・連携の方法
 担任の先生とは、個別事例の連携の中で、担任されている児童の保護者がグループで感じられていたことや話されていたことを共有している。管理職の先生には、個別相談に加えてグループを実施することによって生じる保護者の気づきや変化を、折をみて伝えている。
 報告・連携の際には、担任の先生や管理職の先生と、気軽に、率直に、見立てや手立てを話し合えるように心掛けている。校内の風通しがよくなって、情緒も話されるようになると、おのずと児童生徒や保護者の変化に気づく観察眼は育ち、学校全体に相談しやすい雰囲気ができてくるように思う。

 ここでは、私が SC として学校で行った「保護者グループ」の実践例を簡単に紹介した。目的や枠組みをもって設定された「グループ」が学校領域に広まっていくことを願っている。また、このような「グループ」に加えて、学校領域に元々あるグループについても、その力動に目を配りながら各事例に応じていくことが、SC の仕事にとても役立つと感じられる。
 学校領域におけるグループに関心をもたれている方々と、学校教育相談の仕事に役立つ、実践的なグループの視点、技法を検討しあい、理解を深めていきたい。

※PDFファイルで読む → リレーコラム03「スクールカウンセラによる保護者グループ」梶本浩史