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リレーコラム新企画 No.9 教育研修 言うは易く、行うは難し・・・でもやっぱりやめられない

2022年12月1日

教育研修 言うは易く、行うは難し・・・でもやっぱりやめられない

田辺等

田辺は、相田さんや髙林さんの後で教育研修委員長を経験しました。当時は、本職の精神保健福祉センター長業務がひどく多忙で、北海道の小山芳明さん、広島の菅武史さんに協力を仰ぎ、委員会事務は鎌田明日香さんにお願いして何とか務めを果たしました。

私は“委員長が基礎講座を担当する”という思い込みで、レクチャーを準備しましたが、精神保健センターや保健所のグループは公的機関の実践なので、録音(⇒逐語起こし)は難しい。シナリオロールプレイをあきらめ、印象に残ったセッションのエピソードを活用しました。

いったい基礎講座では何を伝えるべきなのか。私は「あるセッションの、ある瞬間に、グループが一気に治療的・成長促進的な要素を析出する、メンバー間の“化学反応”のような瞬間をまず語ろう、そんな経験を延べ伝えよう」という観点で用意しました(上手くできたか、保証はないが)。基礎講座が契機となって、基底的想定や治療要因などの概念などにも関心を深めてもらい、さらに学んでもらいたいというスタンスでした。

とはいえグループの学習の真骨頂は、やはり体験グループですね。

私自身は、地元研究会などでは、2日間のワークショップを3つのグループに分けて行ってみたり、月例トレイニングを組んでみたりと、トレイナーとして色々チャレンジしましたが、その一方で、学会研修ではトレイニー体験を味わうことが大切でした。

体験Gは、それまで無前提に「支援者」「治療者」と自己規定してきた自分が、白紙の自分に立ち戻って、グループプロセスを体験する場です。夏のグループなら、セミの鳴き声が聞こえたり、かすかに青葉が見えたり、陽光がさしてくる。そこに自分がいて、グループの場から意識が一瞬離れ、自分の故郷への連想が生まれそうになる、ふと、それが場の緊張から自分が逃避しかけている?という自問になる。その時、同じような感覚で発言するメンバーが出てくる、自分も同調する・・・次のセッションでは、その時のグループ内での葛藤が明らかになる。グループが暗礁に乗り上げそうな感覚の中、どうにかしたいと思いつつ、トレイナーからの救済を期待し、そして動かないトレイナーに怒りを感じていた、そのトレイナーとの対決を回避して風景に逃れたのか・・・そういえば、自分は父との間では、正面衝突は一度もなかったな、学校ではあんな風だったのに・・・などと気づく。

セラピストを志向するなら、技法の習得以前に、対象理解と自己理解が重要になります。

対象理解のためには、疾患や症状、障害の特性を理解すること、さらに当事者の疾病や障害の体験を聴いて知って理解することが必要です。これは専門教育でも準備できるでしょう。しかしセラピストを志向する自分の自己理解を深められるのは、やはりメンバー体験をすることです。

またJAGPでは、教育研修の特色として、「相互研修」ということを謳っていますね。

グループセラピストがコンダクトするグループを体験してみたい人にその機会を提供するだけでなく、セラピストを目指す人や力量を充実させたい人に実践的学習の機会を提供するという意図です。

そして複数のスーパーバイザーのスーパーバイジーとなることも推奨されています。そこには“1人の師匠の下での家元制度”ではないようにしたいという考えがあります。現実社会では、“師匠”は、同時に、上司―部下、教授―教室員、雇用主―従業員などの上下構造の2者関係を併せもつことがあります。専門性を高めたい人に、あってはならない圧力がかかったりしてはいけません。また身近に指導者がいなくても、学会の教育研修システムの中で成長することができる・・・そういう環境を用意したいのです。

多くのみなさんに、この教育研修の場に参加していただきたいと思います(最後は、ちょっと理事長風宣伝になってしまいました)。

 

※PDFファイルで読む → 教育研修 言うは易く、行うは難し・・・でもやっぱりやめられない(田辺等)

 

広報委員より

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