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リレーコラム新企画 No.11 公募の質問への回答

相田さんへの質問とその回答

シナリオロールプレイは初学者でも体験的にグループを理解でき、さまざまな研修場面でもっともよく使われている方法だと思います。シナリオロールプレイを実施する上での注意点などがあれば教えてください(こうした事例やセッションはシナリオロールプレイに向いていないなど)。

相田さんからの回答

シナリオロールプレイ実施にあたり気を付けたいこと・追加

リレーコラム執筆に続いて、シナリオロールプレイ実施上の注意点は? というご質問を受けました。例えば、これに向いていない事例などはあるかと訊かれましたが、端的に申せば特にないと思います。もっとも、ほとんどの時間沈黙しているようなセッションは向いていないかもしれません。ただし「注意点」を問われて、そう言えば「役割解除」について述べていなかったと気づきました。再び語る機会を与えてくださったコラム欄の企画に感謝します。

私の幾分苦い経験から記してみます。それは「シナリオを使わないロールプレイ」によるワークショップでした。参加者は自分がよく知っている患者を思い描き、その患者のロールをもって、フィッシュボールの中でワークする課題が与えられました。私は当時自分で治療に難渋中の自己愛的表出の強い軽躁状態の患者としてプレイし始めました。が、セッションの途中で手を挙げて「タイム」を取り、「これは私が演じているに過ぎず実の私ではない」と断りたくなるほどの辛い気持ちに襲われたのでした。やがてワークショップはそのまま終わりましたが、私の中ではしばらく残り続ける辛い体験になりました。私が集団精神療法を学び始めた極く初期の出来事(しかもシナリオのないロールプレイという初心者にはずいぶん重たい作業)でしたが、その後私は「役割解除」という方法があると学び、シナリオロールプレイでもそれが大切な作業だと改めて認識するようになりました。

「役割解除」の仕方にこれでないとならないと定まったものはありませんが、シナリオロールプレイをコンダクト(ディレクト、リード)する人の、あるいはグループの、それぞれの工夫で丁寧に行えるよう心がけたら良いと思います。また「役割解除」という特定の時間枠がなくても、ロールプレイ後のグループ運営の時間の中で、実は役割解除が順調に行われていく現象もよく経験するところです。

もうひとつ。シナリオ作成にあたる匿名化過程で、A氏、B氏と呼ぶ無味乾燥な作業を私は好みません。相田さんを、吉田さんでも、愛川さんでもいい、ときには福岡さん(連想上繋がらないという意味)でもいい、たとえ無理しても名のある匿名の方が、シナリオに人間味を加えられるように感じています。実際、その方が馴染みやすく、登場人物の特徴を記憶する助けにもなると体験してきました。

以上、如何でしょう。さらに工夫が加えられていくことを期待します。

田辺さん・関さんへの質問とその回答

集団精神療法を大学・大学院で学ぶ場合、どのような方法がありますか?心理系出身ではないためか、どのような分野、あるいはどのようなキーワードで探せばよいのか分からずにいます。母校で調べましたが貴学会所属の教員は見つかりませんでした。少し違う例かもしれませんが他学会では「〇〇心理学が学べる大学一覧」を挙げていたりします。素人質問で申し訳ありませんがヒントを頂けると助かります。

田辺さん・関さんからの回答

学生として大学・大学院で学べるか?についてお答えします。

医学部や医療系学部:精神医学講義は、医学部講義は治療の項の中に「精神療法」という大きな枠組での講義は少なくとも1回はありますが、そこで集団精神療法に触れるか触れないかは講師にゆだねられています。当学会員や実践者が「精神療法」の講義担当であれば踏み込んで教えると思いますが、どちらかと言えばレアケース。

より広い医療系では、「心理的支援」や「グループを活用した支援」の講義の中に含まれて扱われていると思いますが、やはり1-2回あるかないかでしょう。

心理系:医学部以上に心理療法の講義や実習は各種用意されていますが、サイコドラマも含めて集団精神療法はメジャーな項目ではないのが実情です。当学会所属メンバーなどが担当講師である場合には踏み込んで教えることはありえますが、大学内での講義分担もあるのでそううまくはいきません。

社会福祉系:心理的支援の枠組みや、精神保健福祉の援助技術法のなかでの位置づけに、SSTや集団精神(心理)療法が主題の講義は1~数回あります。ただし「集団のなかで、その場面の集団力動を理解したうえで個人の心理的支援を行う」という意味の集団(精神)療法を教えるというより、いわゆるグループワークの効果促進のファシリテート技術を扱うものが多いようです(種々のテキストでの扱いの印象です)。

大学院:所属教室や指導教官の志向性によります。集団精神療法を研究テーマとする大学教員は本学会会員であることが多いと思われるので、学会の大会や学会主催の研修会に参加して直にその大学教員に接していただくということになります。

なお集団精神療法をそこのセクションで教育、指導できるか否かは、現状では、指導者・教育者個人の志向性や専門的力量に依存します。ですから、個人の異動により、急に教育の実施が不可能になることもありえます。本学会では、特定の学部や大学院を推薦紹介することは行っていません。

まずは学会主催の研修会などに、ご参加いただければと思います。

(田辺 等)

大学あるいは大学院では、まず、より広い視野の中での学びを目指していることと思います。なので「集団精神療法」に特化した大学や大学院は少ないかと思います。集団精神療法を大学・大学院で学ぶ方法は残念ながら私たちも把握していません。

当学会の教育研修委員会では新人用教育研修の場を設けています。毎年春の学術大会では入門講座を組み入れています。来る2023年3月の第40回大会では未経験者向けの新人向け体験グループもご用意いたしました。また毎年秋に開催される秋の研修会でも2日間に渡っての入門講座を開催します。このような研修の場には大学生大学院生にも入っていただけます。

これらの基礎的な講座を修了したのちの学習の機会に関しては、日本各地に教育研修地区委員がおりますので、お問い合わせいただければ、その地域の研修の場を紹介いたします。

ぜひこのような研修機会を利用して集団精神療法を学んでいただければと思います。

(関 百合)

 

日本集団精神療法学会公式HPコラム No.11 2023年2月)

※PDFファイルで読む →リレーコラムNo.11 公募の質問への回答(相田さん、田辺さん、関さん)

 

広報委員より

質問・感想の募集は終了しました。ご応募ありがとうございました。ご質問への回答をもって、御礼とさせていただきます。