.entry-title, #front-page-title { text-align: left; }

「出張する事例検討会」というグループ/多喜田恵子さん (リレーコラム07)

2021年11月16日

「出張する事例検討会」というグループ

多喜田 恵子

 愛知精神看護事例検討会(以下、「事例検討会」を記す)は、2004年に精神科病院で働く看護師が事例を通して学び合い、サポートすることを目的に発足しました。事例検討会は、愛知県下で行われた研修会に参加した看護師が、精神科看護の場で起きている問題についてグループで話し出したのがきっかけでした。看護師の話を聞きながら、「そういうことはうちの病院でもある」とか、「うちはこんな風にやっているよ」「そういう対応もあるよね」などと語り合ううちに、時々集まっていろいろなことを話し合える場(グループ)を作ろうということになりました。

 事例検討会は、年6回隔月の第4土曜の午後に行っていますが,2018年3月で14年目になります。開始当時は、一部の精神科病院の会議室や大学の講義室で行っていましたが、3年目からは事例を提供する病院に出張して行っています。事例検討会の出張先は、愛知県下の精神科病院に限らず岐阜県、三重県、静岡県、長野県にも出かけ、2015年3月(61回)には鹿児島県まで出かけました。事例について話し合うだけでなく、開始前にリニューアルした病棟や病院の関連施設を見学したり、地域の精神障害者福祉施設を訪問したこともあります。時には訪問先の医師やPSW、OT、CPなどの看護以外の他職種が参加することもあり、多職種連携の難しさや重要性を感じることもありました。

 事例提供者の病院に出張して事例検討会を行うメリットは、事例提供者が働く現場の雰囲気を感じながらメンバー間で話し合えることです。患者や看護師の状況だけでなく、それらを取り巻く治療環境を感じることで、より事例提供者の立場に立って考えることができるように思います。また、事例提供者の病院スタッフが参加しやすいということもあります。病院まで来てくれるのなら事例を提供するという病院が多く、毎回西へ東へとグループが移動しています。同じ病院に出張することもありますが、複数回の事例を提供する背景には、自病院だけなく他病院での状況も知りたいという思いがあるようです。精神科病院の機能分化により、自病院だけのカンファレンスでは限界があるのかも知れません。

 グループの運営は、6名の世話人が交代で司会(コンダクター)を担当していますが、「始まり」と「終了」の合図だけで、そのあとはメンバーの一員になり、事例が抱えている問題やスタッフの現状、またそれらを取り巻く臨床状況などの意見を交わしています。事例が抱えている問題を通して、メンバーの体験を振り返る機会にもなっています。事例検討会というグループは、精神科病院で働く看護師の相互支援の場であると言えます。

 次回の事例検討会は、愛知県の奥三河地区の病院だとか。遠方の病院だと、電車を乗り継いで行こうか、それとも高速道路で行こうかと悩みますが、それも楽しみの1つになっています。事例提供が事欠かないのですが、事例検討会を続けることがメンバーの暗黙の了解になっているのかも知れません。

※PDFファイルで読む → リレーコラム07「『出張する事例検討会』というグループ」多喜田恵子